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    MOVE!MOVE!MOVE! 全曲解説

    「MOVE! MOVE! MOVE!」は、2010年のアフリカ旅行で作られた曲を中心に、

    むっちゃ元気の出るアルバムに仕上がった。

    テーマはズバリ「命」である。命そのものをさまざまな角度から歌い上げ、

    どんな状況下でも輝きつづける光を讃える、

    人生の応援歌が集められた。
    生きている意味を見失ったとき、理不尽な不幸に見舞われたとき、すばらしい出会いがあったとき、

    長い人生の友としてこのアルバムを聴いてほしい。
    たとえ今は気づかなくても、きみの成長に合わせて発見されるたくさんの宝が隠されている。

     

     

    ――― 歌詞ページはこちら ―――

  • 1. きみよ始祖鳥となれ

    なにごとも「最初の人」と「2番目以降の人」では100倍くらい苦労がちがう。
    最初の人は前人未到の暗黒大陸に分け入り、さまざまな困難と闘い、何度も死の危険にさらされ、土地の精霊に導かれながら、1本の道を切り開いていく。
    2番目以降の人たちは、彼をばか者とあざ笑い、嫉妬の重力で引き止めようとする。しかし彼の冒険が終わったとき、手のひらを返したように賞賛し、安易に甘い汁に群がる。
    ならばきみよ、「最初の人」でありなさい。
    独自なもの以外創る必要はない、
    独特な生きかた以外する必要はない。
    孤独な始祖鳥でありなさい。

    今回はアフリカを10カ国ほどまわったが、いちばんいきたかった国はルワンダだった。映画「ホテル・ルワンダ」を見て以来、人間のもつ「負の可能性」を見据えたかった。
    1994年ルワンダではフツ族による一方的なツチ族の虐殺があった。100日間で100万人が殺される人類史上最も残酷な100日間といわれる。昨日まで仲良く暮らしていた隣人たちがある日突然殺人鬼と化し、きみを殺しにくる。当時のルワンダの首都キガリには切り刻まれた死体が町中にころがり、女性の70%は強姦され、子供たちも容赦なく殺された。
    オレは映画「ホテル・ルワンダ」の舞台となったキガリのミルフローレス・ホテルに泊まり、39度の高熱にうなされながらこの歌を書いた。
     2008年オレはカンボジアを旅した。カンボジアは共産主義者ポルポトの独裁によって国民の3分の1が殺される。「キリング・フィールド」(殺人の荒野)と呼ばれる虐殺あとにはいまだに骨が散らばり、頭骸骨の塔が積み上げられている。
     オレは沖縄本島の読谷にある洞窟チビチリガマにいった。
    戦時中約150人が避難し、日本政府による洗脳、強制によって女や子供をふくむ84人が集団自決させられた。自決を強要されても農民たちには青酸カリや刀はない。いつも使っている草刈鎌で父親が自分の小さい子供から順に喉を切り裂き、親や妻、最後に自分の喉を切って自決した。あらゆる自殺の歴史でも、親が愛する子供を殺すのはもっとも過酷なことだ。
    「プロテスト・ソング」と呼ばれる反戦歌は世界中に腐るほどあるが、なにかに反抗する歌は時代とともに風化していく。人間の負の可能性と正の可能性を極限まで見据えた歌はほとんどない。
    地獄に根をはった木が天国に枝を伸ばし、命そのものを讃えるこの歌になった。

  • 3. パピヨン

    時代とともにすべての真実は移り変わるが、変わらない真実がひとつだけある。
    それはすべてが変わりつづけるという悲しい事実だけだ。
    どうせ変わりつづけるのならば、自分自身でなりたい自分に変わっていこう。
    ものすごく深いことを言えば、「運命」というのは、「自由意志」のことだ。
    運命はきみが生まれる前に決めてきた「テーマ」を実現するためのシナリオであって、そのテーマに到達するためのシナリオは瞬間、瞬間、きみが自由に書き換えていける。
    古いサナギを捨てる覚悟がない者は、一生蝶にはなれないんだ。

     

    4. (叡知)

    今から30年前のニューヨークで、オレはヘロイン中毒から逃れようと病院やリハビリ施設を転々としていた。あるキリスト教系の団体で治療を受けたとき、必ず「Serenity Prayer」(ニーバーの祈り)を唱えさせられた。アメリカの神学者ラインホルド・ニーバーによって1930年代か1940年代初頭に書かれた祈りは「平安の祈り」とも「静穏の祈り」とも訳される。
     

     God,  give us grace to accept with serenity the things that cannot be changed, courage to change the things that should be changed,  and the wisdom to distinguish the one from the other.

     神よ、 変えることのできるものについて、 それを変えるだけの勇気をわれらに与えたまえ。 変えることのできないものについては、 それを受けいれるだけの冷静さを与えたまえ。 そして、変えることのできるものと、変えることのできないものとを、 識別する知恵を与えたまえ。(ニーバーの弟子大木英夫訳)


    美しいメロディーは楽器で演奏されるクラシックのように歌いにくい。このメロディーに歌詞をのせ、ひとつの歌として完成するまでむちゃくちゃ歌いこんだ。異なるものたちがほんのピンポイントで和解する奇跡のような歌は人類史上ねえよ。
    どんなまちがいをしようが、どんな罪を犯そうと、誰も知らない小さな思いやりも、きみのすべてを「サムシング・グレート」(なにか偉大な存在)はいつもいつもちゃんと見ているんだ。

  • 子供はバカで、無知で、大人が教えてあげなきゃなんもできない。
    と、思っている大人がほとんどだろう。
    なぜなら自分が「光の子供たち」だったことを忘れているから。
    朝早く目覚めて、上りたての太陽にあいさつし、雲の彫刻を鑑賞し、家のまわりの花を「きれいだね」とほめ、虫と語り、鳥の歌を聴き、家にもどると朝食の準備をするお母さんに「なにやってたの」と叱られる。
    「ううん、なんにも」と答える子供は、この豊かな冒険を「大人」(無感覚な人間)に説明してもわからないことを知っているから。
    この歌は子供のための歌じゃなく、子供たちから大人たちへのメッセージだ。無感覚、無感動になって、人間世界のルールばかりを押し付ける大人たちもじつはもともと光の子供だったんだよね。
    環境問題の先進的な教科書といわれる「沈黙の春」を書いたレイセル・カーソンが伝えたかったものは「センス・オブ・ワンダー」(驚く心)なんだ。
    人間世界のどうでもいいルールに麻痺する日常から、自然界の変化に驚く瑞々しい感性をとりもどすこと。
    児童心理学も現代では180度ひっくり返っている。昔の「無知な子供に大人が教える」から、「子供は大人が忘れたものを教えるために光の国からやってきた教師」だと。
    大人の常識を学ぶことは「成長」ではなく、「後退」だ。

     子供たちを自由に遊ばせなさい。
     謙虚になって子供たちから大人が学びなさい。
     本当に大切な魂の使命を。

    オレのおふくろは26歳のとき腋毛をそっていたらウイルスがはいり、びっこになった。
    大好きな登山もできなくなり、オレを産んだあとも一生足を引きずっていた。
    毎年いろんな障害者施設でライブをしているオレが今から思えば、おふくろはわざわざ障害者という損な運命を引き受け、わが子に「体が自由にならないこと、差別という心の重荷を負うこと」を身をもって教えてくれていたんだと思う。
    新潟のお笑いコンビ「脳性まひブラザース」や「ミスターピーン」をはじめ、日本中に車椅子にのった親友がいる。
    車椅子に自分がのってみるとけっこうたいへんだぜ。上腕筋は筋肉痛になるし、おしっこしたくても障害者用のトイレはわずかだ。
    自分以外の視点を知るのはおもしろい。
    まずは障害者に興味をもって友だちになりなさい。
    彼らを見下さず、あがめず、ふつうの友達になれば、自分といっしょのバカだったことがわかる。
    マザー・テレサの言葉が突き刺さる。

     「愛の反対は憎しみじゃなく、無関心」

  • 7. The Soul in cage

    英語で肋骨を「リブ・ケージ」と言う。
    「リブ」はスペアリブと同じ肋骨だし、ケージは鳥かごと同じ牢獄だ。
    今回の生できみの魂は、きみの「意識」、「個性」、「肉体」という牢獄を選んでやってきた。
    その意味をもう一度考えよう。
    基本的に人は誰も3つのものからできている。
     体、
     心、
     魂、
    である。
    いつもいつも3人がちがうことを要求するので、3つのバインド(束縛)に縛られ、引き裂かれる。
    忘れていけないのは、この時代に生まれたきみは、

    この時代から大切な何かを学ぶことをできる魂として、

    この時代を変えるために選ばれたブレーブハート(魂の勇者)だってことだ。

    きみは死んだら完璧な光の存在に返れるのに、
    なんでわざわざこんなしょーもない時代にうまれてきたの?
    それはきみが必要だったから。この時代を進化させるためきみが必要だったからなんだ。
    知識なんか得る必要はない。
    きみは最初からすべてを知っている。
    ただ思い出すんだ。
    きみが何者かを。

    知ってるかい?

    過去や未来は存在しないんだぜ。

    あるのは花火のように連続する今。

    それだけだ。

    だったら過去に縛られたり、

    未来に夢を預けるなんてバカげたことと気づくだろう。

    こんなクソみたいな時代にきみが生きているのは、

    こんなクソみたいな時代を変えていく勇者として選ばれたからだ。

    くだらない日常を生きていると思いこまされているきみは、

    本当の「革命家」としてこの世に生を授かった。

     

    本当の「革命家」とは、チェ・ゲバラや坂本竜馬ではない。

    名もない君自身の物語を生きることだ。

     

    そこに気づけ、

    社会の賞賛なんてどうでもいい、

    振り返るな、

    きみはすばらしい!

  • 9. Sunday

    古代から人は太陽を神として崇めてきた。

    日本の天照大神、エジプトのアテン、ローマのソル、インドのスーリヤ、ギリシアのヘリオス、メソポタミアのシャマシュは、南アメリカ・インカのインティなど、世界中に太陽崇拝があった。

    太陽信仰がうすれた現代でも、人々は夕暮れにメランコリックになり、夜明けに喜ぶ。オレは朝起きるとはじめて見た太陽にあいさつする。

    その太陽でさえ永遠ではない。太陽の寿命が100億年、樹木の寿命が万年、芸術の寿命が千年、人の寿命が80年、虫の寿命が8時間ならば、与えられた命の時間をせいいっぱい生きるしかないだろう?

     

     

    10. 命の歌

    オレは母親をガンで亡くした。1年前に同じ病院で母(オレにとっておばあちゃん)をなくした母は自分の寿命を知っていたかのように、最後まで笑顔で亡くなっていった。

    病院で付き添っている間、母との会話からたくさんのことを教わった。それはまるでデス・エデュケーション(死生学)のように小説「アジアに落ちる」をはじめ、さまざまなオレの作品に影響を与えている。

     

     家族や身内を亡くした人たちにこの歌を捧げたい。

     死は「引越し」なんだ。あなたの愛する人は自分の肉体を捨ててあなたの心に引っ越した。

     だからいっしょだよ、ずっとずっといっしょだよ。

    1990年オレはアフリカを旅し、この詩を書いた。

    英語のReincarnationは「Re」(ふたたび)、

    「incarnation」(受肉する)で、「輪廻」を意味する。

    オレはただ生まれ変わるだけでなく、「今」、「ここ」へかえってこいという意味をこめた。

    輪廻思想を現実逃避や過去の回想に使うのではなく、

    「今あなたの中にある命をせいいっぱい生ききれ」というメッセージだ。

    死を嘆くことは生を嘆くことであり、死を祝福することは生を祝福することだ。

    死者はあなたを嘆かせるために大切な命をなげうったのではない。

    あなたに生のすばらしさを教えるために肉体のサナギを捨て飛び立ったのだ。

    死の悲しみを知ったあなただからこそ、性の喜びを伝えていける。

     

     涙をぬぐったあなたの手を今度はとなりの人にさしのべなさい。

     あなたの笑顔を目の前の人に贈りなさい。

     そしていつも「今ここ」を生きなさい。

  • 「世界を変えることなんてできない」とあなたは言う。

    それができちゃうのよね。

    あなたの小さな一歩を踏み出すこと。

    きみが動けば、きみが変わる。

    きみが変われば、まわりが変わる。

    まわりが変われば、世界が変わる。

    ほら、たった一歩視点をずらしただけで、

    今まで見た同じ景色が輝いて見えるだろう?

    棚から牡丹餅はないぞ、

    白馬に乗った王子様はこないぞ、

    きみが動かなきゃ、世界は悲惨なままだ。

    本当の革命は、ひとつの旗の下に集まって血を流すことじゃない。

    ひとりひとりが自分の生を輝かせることなんだ。

    あれこれ考える必要はない。

    見る前に跳べ!

    1620年、ピルグリムファーザーズはイギリスからアメリカのマサチューセッツ州のプリマス岬に上陸した。長い船旅でぼろぼろの彼らを救ったのが北米先住民ワンパノーアグ族(Wampanoag)だ。寒さのしのぎ方やとうもろこしや野菜の作り方などを教え、彼らが生き延びる知恵を授けた。

    翌1621年の秋は収穫が多かったため、ピルグリムファーザーズはワンパノーアグ族を招待し、神の恵みに感謝して共にご馳走をいただいたことが「サンクスギビング(感謝祭)」の起源といわれている。

    ワンパノーアグ族は祖先を敬い、母なる大地を慈しむ人々だった。

    ワンパノーアグ族は別れのあいさつに「ウーニッシュ」という。

    それは「美しいままいてください」という意味だ。

    今まで話していた人を肯定し、その未来をも祝福する、なんという美しい言葉だろう。

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    MOVE! MOVE! MOVE!  

    2011年5月リリース。13曲。2500円。